建物の窓には、通常はガラスが入っています。窓ガラスには、次のような役割があります。
- 外の景観を眺望する
- 太陽光の明かりを採る
- 雨や風、虫が室内に入らないようにさえぎる
近年、地球温暖化に関連すると考えられるオゾン層の破壊によって、太陽光の日射以外に紫外線が弱められずに到達してしまう危険性が増していると言われています。
また、台風や強風を伴う飛来物や地震によるガラス損壊の災害も増しています。
単純なフロートガラスでは、種々のリスクに対応できません。そこで、少なくとも次のような3点のニーズを考慮しておく必要が増しています。
- 紫外線による家財や皮膚の日焼けを防ぐ
- 割れたガラスの飛散による2次災害を防ぐ(防災・減災)
- 日射による室内温度の上昇を防ぐ
建築窓ガラス用フィルムは、こうした室内の住環境に及ぼされるリスクを軽減するために開発され、現在ではいろいろな機能を持たせた製品があり、用途にマッチした製品を選択することで、安心・安全な住環境に整備することが可能です。
フィルム機能目次(リンク)
建築窓ガラス用フィルムは、フィルム本体にさまざまな機能の層をニーズに応じて組み合わせて貼り合わせたものになっています。フィルムメーカー各社のフィルムには、飛散防止とUVカットの機能が標準的に実装されています。他に主要なものとしては、日射の遮熱と断熱があります。
飛散防止については、JIS A5759 ガラス飛散防止試験の規格があり、A法ではショットバッグをガラスにぶつけ、衝撃で割れたガラスが窓枠から飛散するかを試験します。
弊店で取り扱いの各社製品は、基本的にこの試験に適合しています。
(※図はグラフィル製品の説明)
UV(紫外線)には、下記の分類があります。
- UBA … 調度品・床・畳の褪色や、肌のシミ,シワの発生に関わる。
- UVB … 破壊力が強く、肌が赤くなったり水ぶくれなどの日焼けの原因。
UVBは、ほぼガラスに吸収されます。一方、UVAは、ガラスを透過してしまう光線なので、室内でも対策が必要です。
建築用の窓ガラスフイルムは、本体フィルムの保護のために「耐紫外線処理剤」が透明粘着剤の中に含めて使用しています。
フィルムをガラスに貼ることではじめて、UVカット効果が発揮されます。
この耐紫外線処理剤の効果で、ガラスを透過してしまうUVAをしっかりと防ぎ、ガラスでUVBを吸収することで、紫外線対策として有効になります。
太陽光線には、大きなエネルギーがあります。この日射しによって、光による明るさと熱が地上にもたらされます。室内の暮らしの中で、明るさを調節したりすることや、日射熱が室内に流入することで室温の調節が必要になったりします。
暑さ対策が急務です
夏が近づき気温が上がると同時に、窓を通して日射熱が直接室内に流入します。このため、室内の温度を下げるために冷房をかけても、窓ガラスから透過する日射熱が室内を暖め続けていれば、冷房機にかける負荷を上げない限り温度を下げにくくなり、結果として電気代がかさむだけでなく、快適な活動が続けにくくなってしまうことにつながります。
カーテンなどで遮光と日射熱の遮断(遮熱)もできますが、景観や部屋の明るさを犠牲にしがちです。家庭や職場での活動を快適にするうえで、入る光の調節や日射熱の遮断を自然に行いたいときに、遮熱フィルムで明るさの調節や、遮熱を行うことができます。
一般的な厚さ3mmのフロートガラスで、何も対策がしていないガラスの場合
目で見える光が91%ですので外は良く見えますが、紫外線もあまりカットできていませんし、日射透過率が86%と高く、室内に多くの熱が流入します。
窓ガラス自体の持つ日射反射と吸収は、14%にとどまるので、紫外線による日焼けや暑さ対策に対しては効果が少ない状態です。
日射を遮断する目安である遮へい係数は、3mmフロートガラスを 1 として相対評価します。
この遮へい係数の数値が 1 よりも小さければ、日射の遮熱効果があるということになります。
冬の断熱効果は、熱貫流率(フロートガラスの6.0W/㎡・Kを基準)で評価します。
熱貫流率は、内外の温度差が1℃の時、1時間あたり,1平方メートルの面積を透過する熱量をワットで表したものです。
熱貫流率の判別:熱貫流率の数値が6.0に近いほど、室外にガラスを貫通して逃げる熱量が多くなるため室温が下がりやすく、値が小さいほど室外に逃げず室温が下がりにくくなります。図のオレンジ色のUターン矢印の太さは、イメージを分かりやすく表現するため、幅が狭いほど室内に熱量が残りにくいことを示しています。)
クリアタイプの遮熱フィルムの効果とは
クリア(透明)遮熱フィルムについて説明します。クリア系は、室内から外を見る景観を重視したいときに使います。
[※以下グラフィル製品を例に説明します。]
【1】NS60 [フィルムの色目がやや濃いめのフィルムの場合]
紫外線は、99%カット。目で見える光の透過は、63%と10%ほど低くなりますが、外の景観ははっきり確認できます。
日射透過率は、44%と何もしない場合のほぼ半分になり、日射反射と吸収は、56%と日射の影響が抑制されます。すなわち、伝わる熱が半分に減るため、室内の空気を暖める効果が削減されるので、冷房の効き効率もよくなります。
遮へい係数は、0.55で、フロートガラスの1に対して遮熱効果が高くなります。
断熱の熱貫流率は、フロートガラスの6.0に対し 5.5でほぼ効果はなく、機能は遮熱に特化。
【2】NS70 [フイルムの見た目をやや色の薄めのフイルムにした場合]
紫外線は、99%カット。目で見える光の透過は、71%となり、外の景観ははっきり確認できます。
日射透過率は、53%と、透過率がやや上がる分下がりますが、日射の反射と吸収が47%と室内の空気を暖める効果が削減されますので、何も対策なしのガラスの時と比べ、冷房の効き効率もよくなります。
遮へい係数は、0.66で可視光線透過率が高めながら、遮熱効果は高めです。
断熱の熱貫流率は、フロートガラスの6.0に対し 5.5でほぼ効果はなく、機能は遮熱に特化。
シルバータイプの遮熱フィルムの効果とは
透明タイプよりもさらに日射しを遮って、熱の流入を押さえたい場合は、シルバー(ミラータイプ)遮熱フィルムで対応します。
このタイプは、鏡のように日射を反射する度合いを高める特性を持つので、外から見ると中の見えにくい目隠しの効果も得られるため、昼間に外からの視線の目隠しをしながら、日射を遮断したいときに使います。
夜間は昼とは逆に外から見えるので、カーテン・ブラインドの併用でプライバシーを守ります。
【3】RSP15 [フィルムの色目がやや濃いめのミラーフィルムの場合]
紫外線は、99%カット。目で見える光の透過は、18%。外からは室内の中が見えにくく、内側からは暗めに見えます。
日射透過率は、14%と、透過率が大きく下がります。日射の反射と吸収が86%と室内の空気を暖める効果が大きく削減されることで、冷房の効き効率もよくなると同時に、昼間の目隠し効果も得られます。
遮へい係数は、0.29でミラーが濃い目(可視光線透過が低い)で、遮熱効果はかなり上がります。
断熱の熱貫流率は、フロートガラスの6.0に対し 5.5でほぼ効果はなく、機能は遮熱に特化。
【4】RSP35 [フィルムの色目がやや薄めのミラーフィルムの場合]
紫外線は、99%カット。目で見える光の透過は、36%。外からは室内がやや見えにくく、内側からは軽い暗めに見えます。
日射透過率は、28%と、透過率が少し上がります。日射の反射と吸収が72%と室内の空気を暖める効果がクリアタイプと比べても、大きく削減されることで、冷房の効き効率もよくなると同時に、昼間の目隠し効果も得られます。
遮へい係数は、0.46でミラーが薄目(可視光線透過が低い)で、遮熱効果は上がります。
断熱の熱貫流率は、フロートガラスの6.0に対し 5.6でほぼ効果はなく、機能は遮熱に特化。
遮熱は、主に春から秋にかけての暑さ対策になります。断熱は、冬の暖房の暖気が室外に逃げないようにする寒さ対策になります。
遮熱・断熱フィルムは、遮熱性能に加えて断熱性能を追加した特性を持つガラスフィルムです。
クリアタイプの遮熱・断熱フィルムの効果とは
【5】NS70LE [フイルムの見た目をやや色の薄めの断熱フイルムにした場合]
紫外線は、99%カット。目で見える光の透過は、67%となり、外の景観ははっきり確認できます。
日射透過率は、53%と、透過率がやや上がる分下がりますが、日射の反射と吸収が54%と室内の空気を暖める効果が削減されますので、何も対策なしのガラスの時と比べ、冷房の効き効率もよくなります。
遮へい係数は、0.58で可視光線透過率が高めながら、遮熱効果は高めです。
断熱の熱貫流率は、フロートガラスの6.0に対し4.6で、外に逃げる熱量が約23.4%軽減する断熱効果があります。
★マルティプライニング多層膜(NS70LEに採用)
日射反射効率の良い「金属スパッタリング膜」を含むナノメートルの薄さの膜を何層にも重ねた『マルティプライティング多層膜』を採用することで、透過と反射の”光波長の選択”を可能にした製品です。
(ナノメートル=100万分の1ミリメートル)
シルバータイプの遮熱・断熱フィルムの効果とは
【6】RSP35LE [フィルムの色目がやや薄めのミラー断熱フィルムの場合]
紫外線は、99%カット。目で見える光の透過は、28%。外からは室内がやや見えにくく、内側からは軽い暗めに見えます。
日射透過率は、28%と、透過率が少し上がります。日射の反射と吸収が72%と室内の空気を暖める効果がクリアタイプと比べても、大きく削減されることで、冷房の効き効率もよくなると同時に、昼間の目隠し効果も得られます。
遮へい係数は、0.41でミラーにより可視光線透過が低めで、遮熱効果はかなり高いです。
断熱の熱貫流率は、フロートガラスの6.0に対し4.3で、外に逃げる熱量が約28.3%軽減する断熱効果があります。